エッフェル塔が見える

富士が見えるかどうか、生活の各場面でアクセントだった。思いがけず見えたときはそれだけで嬉しい。無条件で得をした気分になる。幾度見ても何度眺めても、富士の見える喜びは格別のものがある。

エッフェル塔の見える喜びは、少しそれに似ている。

幾度かパリを訪れ何年か暮らすうち、自然に溜まってきたエッフェル塔写真を少しずつこの場で紹介していきたい。

エッフェル塔へ向かう。さまざまな接近法はあるけれど、表参道とでも呼べるのは右岸のトロカデロ宮からセーヌ河岸へ下り、塔へいたるコースだろう。19世紀末に何度か開かれた万国博の記憶をたどる道。塔の持つさまざまな表情を味わえるここはまた、格好の路上パフォーマンスの場でもある。

フランス人は、何もしないでいくらでもゆっくり時間を送る才能を持っている。手持ち無沙汰を感じる尺度が違うのではないか。常々そう感じているのがこういう場面に接すると、やはりという気になる。シャン・ド・マルス初夏の陽気。

結婚記念の撮影をパリで、こう考えるカップルが世界中から集まってくる。パリの魅力はパリに魅せられた人の数だけある。真冬のあいにくの天候であっても、それなりの舞台を用意してくれる。パシー、地下鉄高架橋の下。右端、寒そうに撮影を待つ業者が印象的。

新海誠監督のアニメ映画「君の名は」を見た。いろいろツッコミどころはあるけれど、3・11をこれだけ内面化した映像にまずはエールを送りたい。凱旋門近くの映画館を出て、パリにいることを信じられない思い。熱っぽい頭のまま街を歩き回ると、そこにはエッフェル塔が居た。アルマ橋のたもと。

アポリネールの詩で有名なミラボー橋より、冬の夕景。セーヌ下流から上流を。中州は「白鳥の散歩道」、先端に「自由の女神」が見える。

ミラボー橋の下をセーヌ河が流れる
 日も暮れよ、鐘も鳴れ
 月日は流れ、わたしは残る
(堀口大學・訳)

アポリネールの詩にレオ・フェレが曲をつけ、シャンソンのスタンダード・ナンバーとなった。

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